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第4回:健康常識のウソ?ホント?
生活習慣病は生活習慣を正せば治る?
「生活習慣病」という言葉は、今や私たち国民の間に広く浸透しています。高齢社会の到来とともにマスコミも頻繁に取り上げるようになり、予防・早期発見の大切さは皆さんのよく知るところとなりました。けれども、日々臨床の現場に携わっていますと、この名称ゆえに少々懸念すべき誤解が広がっているように見受けられます。
じつはこうしたやや曖昧な表現とその後の単純化したマスコミ報道によって、誤った認識が広がるようになってしまいました。その結果、どんな問題が起こっているかと言うと、「こんなに生活習慣を変えたのに、なぜ病気がなおらないのか」と嘆く人たちが非常に増えていることです。
ここで改めて皆さんの誤解を解かなければなりません。
生活習慣病とは、生活習慣だけが原因となって起こる病気ではないのです。
そもそも生活習慣病と言う言葉が生まれた背景から考えてみましょう。ご存じのように、この言葉でくくられる症候群、すなわち歯周病、高血圧や高脂血症、肥満、糖尿病、心疾患、脳血管障害、骨粗鬆症は、かつては「成人病」の名で呼ばれていました。
ところが、ムシ歯も含めて各疾患に対する研究が進むにつれて、加齢以外にも病気の発症や進行に関わるリスク・ファクター(その人固有の形質に由来するものとその人を取り巻く環境に由来するもの)がたくさんあることがわかってきました。しかも、発症の低年齢化が進み、必ずしも成人だけがかかる疾患ではないとの見解から、呼び名を改めようということになったのです。
こうして平成8年12月、厚生省の公衆衛生審議会の提言に基づき、新しく「生活習慣病」という概念が導入されました。この概念規定をいま一度よく読んでみると、「食生活、運動習慣、休養、喫煙、飲食等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」と書かれています。
近年、生活習慣病に関わる新たな研究成果が次々と発表されています。“遺伝子”との関係です。たとえば肥満症では、β3ARという遺伝子変異が関与しており、日本の肥満の五分の一はこの遺伝子変異が原因とされています。これをもっている人は、持っていない人と同じような生活を送っていて果たして健康体でいられるでしょうか。答えは否です。人並みの食事制限や軽い運動だけではどんどん太ってしまいます。
また、食物に対する“感受性”も人によって異なることがわかってきました。高血圧の人は塩分制限が大切だといわれてきましたが、塩分制限に対して反応する人と反応しない人が歴然と存在するのです。となると、一律の塩分制限では意味がありません。歯科の分野でも口腔内のリスク・ファクターが高ければいくら歯ブラシをしてもよくならないということがあります。
このように複雑な要因が絡まっているのが、生活習慣病の実態なのです。したがって、生活習慣病の改善だけでどこまで予防や治療が可能であり、どこから運動療法や投薬、メインテナンスプログラム(プロフェッショナルクリーニング)などの対策が必要なのかを見極める必要があります。医者の立場からすれば、生活習慣病とは、すなわち「個人差を的確に判断しなければならない病気」なのです。
歯科では現在唾液からその機能や、殺菌の量やタイプを調べて個人のリスクを判定します。現在、遺伝子より、将来ごく普通の歯周病か、悪化が速く重篤なタイプの歯周病に罹患するかどうか、予知できる研究も進行中です。
私達はこのような考え方で皆様方のお口の質をしることから始める予防と治療を行っております。
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