ヘルシースマイルは、皆様のお役に立つお口の情報コーナーです。
乳幼児期の食生活とお口の機能の発達
良く噛んで食べる事は、胎児期、乳幼児期から関係しています。
お母さんのおなかの中に新しく生まれた命、初めは本当に小さいですが、休む間もなく、少しずつ少しずつ、人間の必要な組織ができ、成長していきます。
お口の中の歯も作られ始めるのは、乳歯は胎生6~8週目頃から、永久歯は胎生20週目からといわれています。
生まれてすぐに歯が萌えている事は、とても稀な事です。殆どの場合は萌えていませんが、見えなくてもきちんと骨の中にあって、成長しながら萌えてきます。つまり母親の栄養摂取や健康状態は胎児の歯の発育に影響を及ぼします。赤ちゃんがおなかの中にいる頃から、お母さんが規則正しく、バランスの取れた食生活をしていく事はとても重要だと考えられています。
〈まずは母乳から〉
赤ちゃんが生まれてきてまず口にするのは母乳です。そして、この時期から食べる機能が具わってきます。まずは吸啜から、反射で母乳を飲みます。母乳を飲む事で赤ちゃんは病気を防ぎ、赤ちゃんとお母さんの絆を強くします。そして何より、この吸啜反射(※1)が今後の離乳食の「噛む」「のみ込み」などお口の機能発達の基礎となります。しっかり母乳を飲む事で、お口周りの筋肉の獲得をしていきます。哺乳瓶などを利用する場合は哺乳瓶の乳首の形態に気をつけて選びましょう。赤ちゃんの月齢にあっていないものや簡単に飲めてしまう形態だと、するする飲めてしまい、口の周りの筋肉の発達が上手くできなくなってしまいます。
〈歯の萌える時期と離乳食〉
離乳食は食事になれるための練習です。舌の動きや口唇を閉じる事を覚えながら食事になれていきます。この時期の離乳食の形、硬さは重要となります。歯の萌出時期には個人差があります。大体の月齢を参考にして離乳食作りを勧めていくのもいいのですが、お子さんの歯の生え具合をお母さんがしっかりと見て、実際の硬さや大きさを決めていくのも大切でしょう。
乳臼歯が萌えるまでは赤ちゃんは歯茎や前歯で食べ物を噛んでいます。この時期に奥歯を使わないと噛み潰せないような硬い食べ物を与えると、適切な咀嚼機能の獲得につながらない可能性(例:噛まない、丸呑みをする、硬いものが嫌い、偏食がある)があるといわれています。
基本的に離乳完了と呼ばれる時期、食べ物を前歯で噛み切り、奥歯(臼歯)で噛みつぶせるようになる時期は上下の乳臼歯のかみ合わせができる1歳8ヶ月頃です。この離乳完了の頃から歯を使った咀嚼機能が発達します。そして3歳半頃には乳臼歯が全て萌えそろうとされています。大人と同じように硬いものが上手く噛めるのは3歳半過ぎでしょう。噛みにくい食品(例:もち、たこ、こんにゃく、油揚げなどの食材やとんかつ、ステーキのような料理)は3歳すぎまで控えるようにしてあげましょう。
赤ちゃんによって、歯の萌える順番や時期には多少違いがあります。違いがあるからといってあせらず、すすめていきましょう。
〈こんな時、噛む力と硬さが合っていないのかも・・・〉
*口の中にためこむ
いつまでも食べ物を飲み込まず、奥地の中にため込んでいる場合があります。
*水をたくさんほしがる
食事中にむせて、たびたび水分をほしがる事があります。
食べ物を水で流し込んでいる可能性があります。
*すぐに飲み込む
噛むことが面倒くさくて、ほとんど噛まずにまる飲みしてしまう場合があります。
3歳半頃には奥歯が萌えそろい、噛む力は高まりますが急に硬いものを食べさせるのではなく、少しずつ慣れさせてあげる事が大切です。
〈筋肉のバランスが大切〉
離乳の初期では食べ物を口唇や前歯で捕捉する(とらえる)ことが必要です。スプーンで流し込むように離乳食を与えると、赤ちゃんのお口周りの筋肉の発達を妨げてしまいます。
また、舌食べ期の頃には舌を上顎に押し付けて、食べ物をつぶす動きが大切です。でも食材の硬さによってはそれがうまくいかず、舌の癖を引き起こすこともあるでしょう。
この様なことが、筋肉のバランスを崩し、歯列不正の一因になっているのではないかと最近では考えられています。
硬さ大きさに気をつけながら色々な食品を使い、楽しく進めていきましょう。
〈母乳と虫歯の関係〉
歯が萌えていて母乳を飲ませると虫歯になるのでしょうか?
母乳の中の糖分は主に乳糖なので、虫歯になるリスクは低いといわれています。ただ、母乳を飲ませる事で、口の中に物が入る回数が増え、不潔になりやすい事、また、母乳授乳が長くなると母親から虫歯菌の感染が多くなる事が虫歯のリスクが高いといわれる原因と思われます。
食べたり飲んだりした後には、お水を飲ませたりガーゼで拭いたり歯を磨いたり、お口の中を綺麗にするように心がけましょう。お母さんが自分のお口の中を綺麗にすることで、赤ちゃんに虫歯菌を移さないようにする事もとても大切です。
※1 吸綴反射(きゅうせつはんしゃ)
原子反射の一つ。
口に入ってきたもの(ママの乳首など)を強く吸う反射です。この吸綴反射のほかに、唇に乳首などが触れると首を回す(探索反射)、乳首が口に入るとくわえる、おっぱいを飲み込む(嚥下反射)など一連の反射を含めて「哺乳反射」といいます。赤ちゃんがおっぱいを吸えるのは、この哺乳反射が備わっているためです。